2025.08.22

「ひょうごの木」を考える Vol.06

 「ひょうごの木」を考える Vol.06 

戦後のハゲ山で想像していたであろう“未来”に、今、立っている

ー木を使うときの時間軸ー

「不確実な関連性のきっかけを作っているような何か、だと思っています」(能口秀一)

有田佳浩「森を育むお仕事をされている中で、ご自身が『うわー、楽しい!めっちゃ面白い!幸せ!』と感じられるのは、どんなときでしょうか」


能口秀一「今まで人が手入れをしてこなかった森林の状態から、久しぶりに手入れをするときですね。まず、どうやって進めていこうかって、現地でいろいろ考える時間があって。するとイメージが何通りにも出てくるわけです。そうやって将来像を想像した中から、最初のひとつを決めると、その次のことがまた、様々な関係性の中で決まっていって。自分の想像している範囲がずっと広がって、最後には一通り完成する。そんなことを山の中で考えているとですね、仕事は進まないんですけど、そういう時間が結構大事で」

有田佳浩「それはたとえば、子育てに近い感じですか。それとも、ゲームで自分のプロ野球チームを作る感じですか」

能口秀一「それよりもっと、不確実な。きっかけを作るだけで、もうあとはどうなるかわからないっていう。不確実な関連性のきっかけを作っているような何かだと思っています。『将来こうなるんじゃないか』っていう仮説を、ずーっと先まで想像していくっていうのは、林業をしていてすごく面白い。ちょっと不確実、がゆえに、面白いみたいな」

「今直面している問題やメリットよりも、少し遡って見つめ直したい」(山下孝平)

能口秀一「林業っていう仕事はだいぶ先を読まないといけないんですけど、それが実際に見えてくるのは5年後、10年後とかで。あと、今の森林の生育状況だと、そんな林業をやるのと同時に、手入れのために間伐した木でものを作れるんですよ。森林の育成と、その過程で得る木で家を建てるのを同時にできるので、全部繋がっていて面白い。他の人にやってもらうより、自分がやりたいっていうぐらい。自然の不確実性と時間軸と……未来はどうなるかわからない。そんなところが面白いんですよね」

山下孝平「最近、日本中が(大阪・関西万博の大屋根をはじめ)木を使おう使おうとなっていますけど、この『木』というのはほとんどが人の手で植えられた木のことを示していまして。この人工林って、自分たちのひいじいちゃんくらいの世代の人たちが、戦後のハゲ山に植えたんです。とてつもない馬力だったわけですよ。当時の人は、こうやって手入れして、こういう風景が広がって、こう使ってくれたらいいなっていうビジョンがあって、木を植えたはずなんですね。もちろんお金になるからという理由もあったと思うんですけど、とにかくその未来を想像して植えていったはずです。そして、今、その未来に僕たちが立っているんですよね。木を使おうとするときに、今僕たちが直面している問題やメリットから考えるより、もう少し遡ったところから見つめ直すっていう、“時間的な視点”が必要なんじゃないかと」

「何をもって本当の自然、なのか」(みしまあきひろ)

みしまあきひろ「今回、皆さんと語り合うなかで、自然ってなんなのかな?と改めて思いました。本当の自然について考えたときに僕が思うのは、人は不自然(・・・)な自然を愛し続けているなと。畑を作るのもそうですし、YouTubeで焚き火のゆらぐ音を聞いて落ち着くのもそうですし。僕らは、都合のいい自然を求めようとしているのではないのかなって。自然とは、何をもって本当の自然なのかということを話す場所が、この「ひょうごの木」Creation Baseなのかなと感じています。そういった話が、今必要なんじゃないかなと思っています」

能口秀一    木材コーディネーター育成にも取り組む製材所(有)ウッズ代表取締役

山下孝平    木製テントhitotoを製造販売する(同)大山井の代表取締役

みしまあきひろ 木や自然、循環をテーマに描くイラストレーターアーティスト

有田佳浩    多くの企業の広報制作にも関わっている県広報プロデューサー

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