2025.08.22

「ひょうごの木」を考える Vol.01

 「ひょうごの木」を考える Vol.01 

法隆寺の五重の塔は、不揃いの木で建っている

ー木の声を聴く、個性を活かすー

「昔はクセのある木をうまく使って、それが強靭な建物として1000年以上建っている」(小池陽人)

小池陽人「考えてみたらお寺って本当に木に囲まれていまして。須磨寺も裏山があって、楠(くす)を中心に槙(まき)などもあります。お堂はすべて木造の建物ですし、普段ずっと拝んでいるお仏像も木造なんですね。お香も毎日仏様に献じるのですが、香木と言ってですね、これも木のお香をあげています。そして我々は護摩として木を毎日のように焚いているんですね。さらには一弦須磨琴と言って、一本しか弦のないお琴が伝統楽器としてうちのお寺に伝わっているんですけれど、それももう一枚の板に一本弦を貼っただけの楽器なんですね」

有田佳浩「最近、コンクリートのお寺が出てきていますよね。このあたり、やはり、木ならではのものがあると思われますか?」

小池陽人「私自身が、コンクリートのお寺より木造のお堂がいいなっていうのがあって。西岡常一さんという、法隆寺などを建てられためちゃくちゃ有名な宮大工さんの本が大好きで、まさに“木と対話”しながらお堂を作っていくんです。その西岡さんが書いている中ですごく大好きな部分があって。法隆寺の五重の塔を見てみると、もう不揃いの木ばっかり使ってるっていうんですよね。今は結構、なんというか綺麗にカットされた木材で建てられることが多いんですけど、昔はクセのある木をうまく使って、強靱な建物として1000年以上建っている。これは人間社会も一緒じゃないか、と書いていて」

「現代はマニュアル化、あるいは規格化された正解を求められやすいけれど」(小池陽人)

小池陽人「今ってどうしてもマニュアル化して、あるいは規格化されたものでわかりやすい正解を求められるんですけど。木材って自然のものなので、曲がったりとか硬くなったりとか、いろんなクセがあって、そのクセを生かすというのが宮大工の醍醐味らしいんです。そう考えると、我々の組織もそうだし、人間もそうだし、木もそうだし、本来はその個性っていうものが邪魔し合わないというか、むしろ補いあったり、支え合ったりみたいなことがあるはず。我々はもっと木から学ぶべきことはたくさんあるんじゃないかなっていうのは、感じてます」

小池陽人   YouTubeで人気の法話を配信する大本山須磨寺の寺務長

有田佳浩   多くの企業の広報制作にも関わっている県広報プロデューサー

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