ひょうごの木×ウイスキー樽 #1
丹波の木が醸す
ここにしかないウイスキー
○株式会社西山酒造場 製造課 濵木 大輔さん
○有限会社ウッズ 代表取締役 能口 秀一さん
豪雨災害をきっかけに、地元の木材を使う取り組みを始めた西山酒造場。酒蔵をリノベーションしたカフェではトレーやメニューブックに県産木材を利用しています。さらに、数年前から手がけるウイスキーの熟成樽に使えないかというアイデアが浮上。地元の製材所、ウッズの協力を得て、まずは庭先で育った木で試してみることになりました。
酒造りを見守ってきた木に
新しい命を吹き込む
2025年2月、丹波市市島町の西山酒造場に真新しいウイスキー樽が届きました。緑豊かな丹波の山裾に酒蔵を開いて170年余り。4年前からウイスキーの製造にも取り組む老舗酒蔵が初めてオーダーしたウイスキー用の樽です。樽の鏡面に使ったのは、蔵の庭先で大きく育った樹齢100年のヒマラヤスギ。この木を使った樽で、どこにもないウイスキーを作るという挑戦が昨年の秋にスタートしたのです。

西山酒造場の濵木 大輔さん(右)、ウッズの能口 秀一さん(左)
タッグを組んだのは丹波市氷上町の製材所、ウッズ。樽に使う木の製材は初めてでしたが、丸太からの切り分け、低温での乾燥、木目の流れを見たり節を外したりと鏡面に適した良質な部分だけをさらに切り分ける作業……と樽材独自の厳しい基準をクリアしながら仕上げました。ヒマラヤスギを使ったウイスキー樽は世界的にも珍しく、西山酒造場の濵木大輔さんは「切り分けたときの甘い香りに驚きました。水につけてみるとアクセントになる芳香を感じて、どんなウイスキーができるのかとても楽しみになりました」と話します。 新しい樽ではまず自社の日本酒を熟成させて樽酒として出した後、ウイスキーを注いで熟成させます。西山酒造場初の“酒カスク”のウイスキーができあがるのは数年後の予定です。


(右)庭先のヒマラヤスギを使った新樽。丹波生まれの“酒カスク”ウイスキーに期待が高まります
森を守り育てるために
地元の木で付加価値を
西山酒造場では、2014年と2018年の豪雨災害で被災したのをきっかけに地元木材の活用を進めています。裏山の土砂崩れの原因が森林の荒廃にあると知り、少しずつでも地元の木を使って森を守りたいと考えました。

古い酒蔵を再生して2024年にオープンしたカフェでは、メニューブックやトレーに県産のヒノキを使用。今後もさまざまな用途で地元ひょうごの木を取り入れていく予定で、ウイスキー樽もその一環です。まずは今回のヒマラヤスギで試した後、地元のスギやヒノキを使っていく計画です。


歴史を感じる空間で食事やおやつをいただけます
(右)カフェで提供される料理には丹波産の食材がたっぷり。トレーは県産のヒノキです
ただ、酒蔵をカフェに改装した際には、県産木材では割高になってしまったとか。「その経験から、県産木材を取り入れるうえでの最大のネックは価格だと感じました。だからこそ使う側からも付加価値を探していきたい。例えばこんなふうにどこにもないウイスキー樽にすることで高付加価値化を図れるのではないか」と濵木さん。ともに取り組む能口さんは、「施設に県産木材を使う際には、規格が一般流通材と異なっていたり、普段取り扱っていないために複数の材木店を経由してしまったりして、価格がかさむことがある。だからこそ、地元の製材所とつながることが大事。地域で計画的に木材を生産して使うことは森林整備や環境保全につながり、山の安全やいつでも人が入れる気持ちのいい森林にもつながる。ウイスキー樽は目新しく、わかりやすく、木の個性も伝わる取り組み。どんなお酒になるのか、楽しみです」と話しています。

<各社紹介>
■西山酒造場
丹波市市島町中竹田1171
1849年創業の酒蔵。日本酒「小鼓」で知られ、最近は酒造りの技術を生かした焼酎やリキュール、ブランデー、ジン、ウイスキーの製造にも力を入れている。2024年8月には1896年に建築された酒蔵をカフェや宿泊施設を備えた「鼓傳」をオープン。丹波の酒と料理、風土や文化に触れられる施設として人気を集めている。
■有限会社ウッズ
丹波市氷上町賀茂72-1
「木材を活かして、森を育む製材所」をコンセプトに、森林資源調査・管理・製材・木材販売までの一貫体制を持つ地元企業。代表の能口秀一さんは、木材コーディネーターとして地域産木材にこだわった木材コーディネートと地域の木材流通に関するコンサルティング業務を行う。