REPORT02
兵庫の「木」と「樹」をめぐるストーリー
多可町産ヒノキを活かす仕組みの再構築。
地域で森林を活用してきた技術を守るために、
できること。
「大工さんになりたかっただけ」と話すのは、多可町で工務店を営む太田亨。伝統工法の技術を有する大工職人でもあり、地元の地域材であるヒノキで家づくりを行っている。
「きっかけは多可町で地域の人と関わるうちに、森林を持っている人から地元の木を使ってくれないかと言われたこと。話を聞くと、多可町の人工林の7割はヒノキ。建築資材として需要があるのではと」。
北はりま森林組合の協力のもと、多可町産ヒノキの原木を入手することに成功。しかし、「建築資材として利用するには製材工程が必要。林業の衰退で減った製材の場を確保しなくてはいけない」と自ら製材所を作って加工を始めた。「製材所がなくなると本当に地域材が使われなくなる。若者を育成して材料の供給を担う人材を絶やすことなく継承したい」と地域材を活用する仕組みの再構築を進める。そして「僕はひとりの大工として、このヒノキで家を建てたい」と話す。
事務所には娘の川口翼が多可町産ヒノキで作る可愛らしい木工品が並ぶ。地域内外を問わず来てもらえる拠点として、木を使う楽しさを発信。「親子で楽しんでもらえるものを」と話す。太田は「山で自然を体験したり、ここでワークショップに参加したり、多可町で1日中、木と触れ合って遊べるようにしたい」と計画する。
丹波篠山市にある「mocca」には、地域材の活用に志を持つ仲間が集う。世代を超えてアイデアや技術を交換することで太田の取り組みは広がり、進んでいく。